「夫婦なんだから、言わなくてもわかるよね?」
「長く一緒にいるんだから、私がして欲しいことを察してほしい」
こんなふうに思ったことはありませんか?交際期間が長かったり、考え方の近さを結婚の決め手にしていたりすると特に、結婚後お互いに「察してほしい」気持ちが強くなるかもしれません。
でも、実際には 「わかっているはず/わかってくれるはず」という思考が、すれ違いの大元になっていることが多いのも現実です。最初はほんの小さなズレだから...といってやり過ごす程度のことかもしれません。それも、お互いに言葉にしないまま積み重なっていくと、やがて大きな誤解や不満につながり、取り返しがつかないところまで行き着いてしまうこともあるのです。
お相手とのやりとりの中で「なんでこんなに心がモヤモヤするんだろう?」と感じる瞬間はありませんか? 結婚を意識した婚活中のやりとりでも、こうしたモヤモヤを感じることは少なくないかもしれません。または、「これから出会うお相手とすれ違いなく交際を進めるには...?」と考えている方もいるでしょう。
「心のモヤモヤ」それは、小さなすれ違いが積み重なっているサイン。
すれ違いが目の前に現れた時に大切なことは、「わかって欲しい」と相手を責め、欲しい行動を引き出すことではありません。そうではなく、自分が「具体的に言葉にして伝える」ことです。これまでの2人の関係に甘えず、具体的に言葉にして伝えあう習慣が、二人のすれ違いを防ぎ、信頼を深めていきます。
まずは、「言わなくてもわかる」を前提にした言葉にしないコミュニケーションが、如何にしてすれ違いの元になるのか、具体的に見ていきましょう。
次に示す会話は、海外でよくあるジョークでもあるそうですが、男女のすれ違いをよく表したやり取りです。
妻:「今日、頭が痛くて辛いかも…」
夫:「じゃあ、薬飲んだら?」
妻:「もういい!」
女性は、女性の怒りポイントに、男性は、怒りの理由がわからない夫側の意見に共感する人も多いのではないでしょうか。それぞれの言葉の裏にある言外の期待や思考は以下のものです。
妻の言外の期待:「心配してほしい」「早く帰宅してほしい」「家事や育児を率先して手伝ってほしい」
夫の言外の思考:「心配だな…とにかく早くよくなるように、解決策を示そう!」
それぞれに、言葉の裏側にある言葉を言わないことで、妻は「気遣ってほしいのに」とモヤモヤし、夫は「助言したのになんで怒られたんだ?」と困惑するという結果になります。このまま言葉でのすり合わせがなければ、妻側は「夫は優しさのない」という思考を深め、夫側は「心配の仕方」がわからず、言葉をかけるのを躊躇するようになるかもしれません。
次の例も見てみましょう。
夫婦で「子どもが寝た後にオンラインで映画を観る」と約束をしています。その前に夫がコンビニに用事で出かけ、買い物をして帰宅した場面です。
妻:「…」(なぜか不機嫌)
夫:「?」(なぜ怒っているのかわからない)
そのまま沈黙合戦に突入。結局、映画は見ずに寝ることに。
妻の言外の期待:「一緒に映画を見るんだから、映画のお供(お菓子や飲み物)を買ってくるでしょ?!」
夫の言外の思考:「用事のものをササッと買って、早く映画を見る時間を作るのが最優先!」
この例でも同じように、「言葉で伝える」をしなかったために「気が利かない」夫に妻は不満を募らせ、夫は「機嫌が悪い理由がわからない…」と戸惑うという結果に。
ここで見た例は少し大袈裟なところがあるものではありますが、こんなふうに「言外の期待・思考」によって不満や失望が大きくなることは、夫婦関係において意外とよくあるものなのです。
すれ違いが起こるのは不満だけではありません。
実は 感謝や喜びも「言わなくても伝わるでしょ?」と思い込み、言葉にすることを怠ることで、関係の鮮やかさが薄れてしまうことがあります。
妻は夫のために、彼の好きな料理を作る。
夫は黙々と食べ、「ごちそうさま」と言って席を立つ。
妻の心の声:「せっかく特別な料理を作ったのにな…」
夫としては「当たり前に美味しいから、特に何も言わなかった」だけかもしれません。しかし、妻側は「一言『美味しい』や『わざわざ好きなもの作ってくれてありがとう!』と言ってくれたら嬉しいのに…」と感じ、小さな「モヤ」感情を抱いてしまうでしょう。
夫は忙しい合間を縫って、妻のために平日にランチ時間を作った。
妻はランチ中、自分の話したいことを話して終わる。
夫の心の声:「自分なりに時間を作ったけど、特に感謝もされないのか…」
妻としては、「いつも仕事が忙しくて話ができないのだから、私の話を聞いてもらって当たり前」だと何も言わなかったのかもしれません。しかし、夫側は、「話をする時間を作っても、特に嬉しくないのかな。もう無理しなくていいや。」という思考になってしまう可能性もあります。
パートナーの行動を受け取ることが日常になると、パートナーのせっかくの思いやりも「してもらって当然」なものと感じるようになってしまいます。そうすると、自然と感謝や喜びの言葉が減ってしまうのですが、これでは関係を悪化こそすれ、良好に好転させることはないことは想像に固くないでしょう。
これまで、「言葉にしないことですれ違うケース」を見てきました。では、どうすればすれ違わずにいられるのでしょうか。それは、「希望・期待」や「感謝・喜び」をきちんとお相手に伝えること。どんな風に伝えたらいいかを、「希望・期待」や「感謝・喜び」の二つに区分してそれぞれ考えていきましょう。
パートナーに自分の「希望・期待」をきちんと伝える方法を3ステップでご紹介します。
まずは、自分が本当に何を望んでいるのかを自分がきちんと理解することが大切です。相手への期待や希望を感じたら、まずはそれをキャッチする習慣をつけましょう。モヤモヤしているけれど、言葉にできないときもあるものです。そんな時は、少し自分の気持ちを整理する時間を持つとよいかもしれませんね。
CASE1の場合:『頭が痛いな。でも、子供達のことなど休めないことがいっぱい。どうしよう。』
→「パートナーに手伝って欲しい」という思いをキャッチ
CASE2の場合:『映画を一緒に見るの楽しみだな。今日頑張ったし、アイス食べながら見るのもいいな。あ、〇〇くんコンビニ行くのか。』
→「パートナーにアイスを買ってきてほしい」という思いをキャッチ
思いをキャッチしたら、すぐに相手に伝えるのではなく、「相手に伝わる言葉を選ぶ」ということも大切です。責めるような言い方になってしまったり、遠回しすぎたりすれば希望を言ったとしても伝わりません。具体的な表現方法は別の機会にまとめてご紹介しますが、相手に誤解なく、気持ちよく自分の思いを受け取ってもらうにはどんな言葉がいいだろう、と少し考えてみると反応が変わるかもしれませんよ。
例;「いつもありがとう。〇〇してくれると、もっと嬉しい!」
思いをキャッチし、言葉を吟味したら、希望を具体的に相手に伝えます。この段階では、「具体的」であることが重要です。「家事を手伝って」よりも「皿洗いを手伝って」、「甘いものが欲しいな」よりも「(銘柄)のケーキが欲しい」のようにするのが良いでしょう。なぜなら、抽象度が高ければ高いほど、相手の判断の余地が介在してしまうため、せっかくのお相手の行動してくれても、満足いく結果にならない可能性が残ってしまうからです。これでは自分も相手も悲しい着地点となり、誰も得をしません。「具体的に」して欲しいことを伝えましょう。
CASE1の場合
「今日は頭が痛いから、ちょっと休みたいな。夕飯の調達と子供たちの寝かしつけをお願いできる?」
CASE2の場合
「コンビニ行くついでに、映画のお供のアイスを買ってくれると嬉しいな!」
次に、相手に感謝・喜びを伝える方法を2ステップでご紹介します。
お互いに、家族のために何かすることが当たり前になると、知らず知らすのうちに相手の行動に鈍感になってしまうものです。 まずは、「当たり前」フィルターを取り払って、相手の行動の中に「ありがとう」と伝えたいポイント、「嬉しい」と伝えたいポイントを探すようにしてみます。「こんなことは当たり前だし...」と心が言ってくるかもしれませんが、それはフィルターそのものです。「すべき」という視点から一旦離れてあなたあ家族のためにしてくれている行動を受け取りましょう。
お相手の行動の中に、感謝ポイント・喜びポイントを見つけたら、迷わず積極的に言葉にします。あなたの心が動いているかどうかに関わらず、「ありがとう」と「嬉しい」と口にすることが大切です。その他の感情についても、「言わなくても伝わるでしょ」という心のささやきは取り払って、あえて言葉にしていきましょう。
例:「僕の好きな料理にしてくれたんだね!ありがとう!」
例:「一緒にランチの時間を作ってくれて嬉しい!」
今まで言葉にしてこなかった人が、言葉にするようになると、まず負の思考ループから解放されます。負のループとは、言葉にせず、「察してくれない…」と勝手に期待し、「思ったように動いてくれない...」勝手に落ち込むというループです。さらに、素直に伝えることが増えると、「きちんと伝えれば、相手は応えてくれる」 という実感を持つことが増え、相手への信頼感が増していきます。
「何をやっても空回り...」という感覚が減っていきます。これまで言葉以外の部分に気を張り巡らせなければならなかった状態から、言葉を受け取れば良くなるため、安心感や心の余裕も生まれるでしょう。「〜してくれると嬉しい/助かる」という言葉をたくさん受け取っていくうちに、パートナーを喜ばせる方法や、満足してもらえる方法がわかるようになる上に、実際に喜んでもらえる経験が増えるため、2人の関係に対する自信につながります。
感謝を言葉にすること習慣になると、自然と相手の行動へのアンテナが高くなります。 お互いに「やってもらって当然」を振り払って、「〇〇してくれてるんだ!」と気づけるようになるということです。自分のためにパートナーがたくさんのことをしてくれているという感覚は、穏やかな幸せな感覚を身近なものにしてくれます。
こんなふうに、希望や感謝を「きちんと言葉にする」ことは、「心のモヤモヤ」を解消するだけでなく、二人の関係をより強固にしていくものなのです。
「言葉にする」ことの大切さは、婚活中のあなたにも当てはまります。
結婚後にお互いが心地よく過ごせるお相手と出会うには、婚活の時点で『希望は配慮しすぎず伝える』『感謝を言葉にする』ことを意識するのが大切だからです。
そうすることで、無理なく長く続く関係を築ける相手と自然にマッチしやすくなるでしょう。また、お相手からも、結婚後の充実した関係性をイメージしてもらいやすいという利点もあります。
つまり、婚活時点で「察してほしい」を手放せる人ほど、長く穏やかに関係を続けられるお相手と巡り合えるのです。
今回の記事では、夫婦関係において「言わなくてもわかる」は幻想で、すれ違いの元となっていることを解説いたしました。
いくら長い関係でも、どれだけ相性が良くても、思いや感謝は言葉にしないと伝わりません。
不満は溜め込む前に、具体的に伝えることが大切です。そして、不満だけでなく、「ありがとう」「助かった」「〇〇してくれると嬉しい」 というポジティブな感情を積極的に伝えることで、夫婦関係はより安定し、温かいものになっていきます。
シリーズ最終回は「夫婦の愛を育てる方法」について。次回更新をお楽しみに!
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